医療人材の確保は国の責任で~仲介手数料等規制の適正化を早急に実現してください

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 職業安定法に基づく省令・指針の一部改正により、2025年4月から、人材紹介業者に対し、人材紹介手数料率の実績公開等が義務化された。あわせて、職業紹介事業及び募集情報等提供事業の利用料金・違約金明示、募集情報等提供事業者による金銭等提供の禁止が実施された。これに伴い、厚生労働省は職業紹介事業者の手数料と離職率の公表を始めた。

 医療や介護、保育などの福祉分野は人材不足が常態化している。病院関連団体が2020年に行った調査では、73.5%・241病院が人材紹介会社を活用。看護師の配置基準は診療報酬の要件でもあるため、民間企業の手を借りてでも早急に実践力のある経験者を確保したい施設側の切実さが想像できる。

 公表された手数料率をみると、医師で10.0%~34.4%、看護師、介護職や事務系でも20~30%となっている。2024年診療報酬改定の前後で医業利益率、経常利益率がともに悪化し赤字の病院が6割超というなかで、医師1人を確保するために平均351万7000円、看護師で平均76万円を負担しなくてはならないことに驚愕する。厚労省が公表した資料をもとに、広島県内の福祉系紹介事業を抽出してみると、手数料は年間賃金の30~200%、返戻のある保証期間はほとんどが6か月未満であった。これだけの負担をしても、2~4割が1年以内に離職(医師15.8%、看護師20.3%、准看護師41.5%)する。

 このような事態が生じた背景には、1999年の労働者派遣と有料職業紹介の原則自由化と紹介手数料の上限撤廃がある。14年にはハローワークの求人情報が民間の紹介会社に提供されるようになり、規制緩和に乗じた人材ビジネスとして、事業者は1998年の約3500から10倍に増加した。転職の増加が利益になるため退職や再就職の斡旋にまで触手を伸ばし、診療時間内でも憚ることなく宣伝する。現場の足元を見たかのような企業活動は目に余る。

 そもそも福祉事業は公定価格であり、手数料負担分を価格に転嫁できない。もとをたどれば患者・国民の保険料や税金でもあり、福祉を儲けの種にすれば、さらなる国民負担の増加を招きかねない。

 諸外国には複数年契約による手数料分割払いや公的な人材配置の仕組みを導入している国もある。医療をはじめとした公的事業においては、国の責任で仲介手数料等規制の適正化を早急に行い、施設に負荷を掛けない仕組みを検討すべきである。