基本的人権の尊重、平和主義、国民主権を守る政治を~今こそ、日本国憲法三原則の堅持を求めよう

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 3月26日、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機について、第三国への輸出を解禁することを閣議決定した。あわせて国家安全保障会議(NSC)で定めた武器輸出に関するルールである「防衛装備移転三原則」の運用指針も改定した。英国、イタリアとの次期戦闘機共同開発を管理する政府間機関「GIGO(ジャイゴ)」が、開発管理だけでなく、第三国輸出の管理や支援を行い、2035年までに、対地攻撃能力を持つ航空自衛隊F2戦闘機の後継機などの開発を目指す。

 日本の武器輸出に関する規制は、1967年に佐藤内閣が、①共産圏、②国連決議で禁じられた国、③国際紛争当事国またはその恐れのある国への武器輸出を禁じる「武器輸出三原則」を表明、76年に三木内閣が「憲法の精神に則りすべての国への武器輸出(武器製造関連の設備を含む)を慎む」と全面禁輸を決めたことによる。その後、特例措置を講じながらも、抑制的な防衛政策の柱として歴代政権に引き継がれてきた。しかし2014年、第二次安倍内閣はこれを放棄し、現行の「防衛装備移転三原則」を策定。2023年12月、岸田政権下で「防衛装備移転三原則」を改定、ミサイルや弾薬など殺傷能力のある武器の輸出解禁に踏み切った。政府は開発品目や輸出国を定めた運用指針を提示し、武器輸出が無制限に拡がることはないと強調。しかし、指針には対象を拡大する余地が残されており、輸出国が将来に渡って戦闘を開始しないという保証もなく、歯止め策としての実効性は乏しい。さらに、実際に戦闘機の輸出を判断する際には閣議決定を経ることで安全性を担保するというが、議会の重要性を軽視した政府・与党内での密室協議に変わりはない。

 5月10日には、国家機密の範囲を経済分野にも広げ、情報を漏洩した場合に罰則を科す「重要経済安保情報保護法」が成立した。防衛や外交などに限定していた特定秘密を経済分野に拡大するとしたものの、その要件や指定範囲は曖昧なまま。国民のプライバシーや知る権利などが制限される危険性を孕み、経済情報の国家統制につながりかねない法律に、国会の監視が利かないということだ。憲法が謳う三原則の一つ、国民主権(議会制民主主義)を軽んじる政権が、監視・統制、武器輸出に傾倒していく姿に80年前を想起する。さらに岸田首相は、今国会会期末に行われた党首討論の場で、強引に成立させた政治資金規正法について野党から強く指摘されるも、討議を脱線し改憲論の熱弁に終始した。

 広島市は、今年の平和記念式典に、パレスチナ・ガザ地区を攻撃するイスラエルを招く一方で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアと同盟国ベラルーシへの招待を見送るとした。原爆による犠牲を悼み、核兵器廃絶と世界平和を願う式典に、政府や利害関係国への忖度がはたらく余地はなく、招待国を選り分けることなく世界の国々の代表に戦争の悲惨さを伝え、恒久平和と核兵器廃絶の思いを共有することが被爆地ヒロシマの役割である。ジェノサイドを続けるイスラエルやロシアに、非人道的な行為がもたらした現実を受けとめ、一刻も早い戦闘の終息を求める機会とすべきではないか。

 日本国憲法前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認」し、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と、排除の原理を明確に廃しているのである。人権を蹂躙する国際紛争や戦争を助長、加担する武器の開発や輸出は、日本国憲法の平和主義に反する。誠実な外交を安全保障政策の柱に据え、国際的に信頼を得る国家運営に立ち返ることを強く求める。