歯科医療費の総枠拡大の実現を~歯科医療機関に、迅速な物価高騰対策の支援策を
保団連は、「物価高騰に関する医療機関の影響調査」(2025年3月)の結果を公表した。51.8%の歯科医療機関が、2023年1月と比較して収入が「下がった」と回答。減収幅が10%以上の医療機関は41.5%であった。歯科治療では、歯科用ユニット、レントゲン機器、滅菌器、口腔外バキュームやコンプレッサーなど、機器のほとんどで電力を使用する。しかし、光熱費・材料費の値上がり、人件費を「(診療報酬で)補填できていない」と回答した医療機関が90%を超えた。0.57というわずかなプラス改定では、2021年から続く物価高騰の前には、息をつなぐほどにしかならない診療報酬改定であったと言わざるを得ない。
2024年改定では、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準が「口腔管理体制強化加算」(口管強)に改変された。「口管強」を届け出た場合、歯周病安定期治療の算定間隔の短縮や加算点数も設けられ、エナメル質初期う蝕管理料と根面う蝕管理料でも加算点数が算定できる。しかし「口管強」を未届けの医療機関では、同一の医療行為を行ったとしても、前述の加算は算定できない。「口管強」の届出では、複数名の歯科医師の配置、または歯科医師と歯科衛生士の配置が人員配置要件として求められている。歯科医療従事者の人材不足が問題となるなか、歯科衛生士確保のハードルは高い。また、歯科医師1人が住民の歯科医療を担っている地域も少なくないが、そういった医療機関では「口管強」の届出はできないこととなる。歯科衛生士の雇用が困難な地域での医療継続をさらに困難にする要件と言えるのではないか。また、エナメル質初期う蝕管理、根面う蝕管理は歯科医師が行う処置とされているが、当該管理と関係がない人員配置要件によって算定点数に差が生じることは納得しがたい。この間歯科では、数々の施設基準が設けられ、届出の有無によって点数が区別される流れが強まっている。しかしその施設基準の要件が、患者にとって必要なのか、医療の水準を高めるものなのか、疑問となる点も多い。
固定した歯科医療費の枠内では、こうした要件による差別化で「評価が上がった」ように見せる改定が繰り返されるのではないか。「『保険でよい歯を』広島プロジェクト」では、「保険でより良い歯科医療の実現を求める」署名をひろげ、住民とともに歯科医療の拡充に取り組んできた。歯科医療費の総枠拡大を何としても実現させよう。