『軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)』で、核兵器廃絶に向けた被爆国の役割を 外相の『極限における核兵器使用容認』発言に抗議する

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広島県選出の衆議院議員である岸田文雄外務大臣は、1月20日に長崎市で、核軍縮・核不拡散に関する政策スピーチを行い、そのなかで、 「少なくとも個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定するよう宣言すべきだ」と述べたことが報じられている。核兵器の限定的な使用を容認する発言である。被爆者医療に携わってきたヒロシマの医師・歯科医師の団体として、強い抗議の意を表明する。

昨年、日本政府が「いかなる状況においても核兵器が再び使用されないこと」とした「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に署名しなかったことに、国民の批判が集中した。その後、10月に入り賛同したものの、「核兵器を禁止するだけでは廃絶できない」「人道の議論と安全保障の議論の両方が重要」とする“核の傘に依存する共同声明”にも賛同した。この矛盾した対応は、各国の平和に対する姿勢を侮辱するものである。

岸田外相は、新たな核兵器国出現、核開発に利用される物資・技術の拡散、核テロの3項目の防止を主要課題とする「三つの阻止」を提唱するとともに、核兵器の数、核兵器の役割、核兵器を保有する動機を減らす「三つの低減」を提起している。しかし、福島原発事故の汚染水流出が止まらない非常事態を「コントロールできている」という虚言で覆い、再稼働や原発輸出に邁進する国の言葉は、核兵器廃絶への説得力となり得るものではない。むしろ「核の潜在的抑止力を持ち続けるためにも、原発を止めるべきではない」と いう自民党幹部の発言の方が一致する。

安倍首相は、昨年末閣議決定した「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」のなかで、砦である武器輸出三原則の見直しを打ち出し、「実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備」していくとした。そして年明けには「集団的自衛権の行使容認」である。そのような政権下での外相発言が、 核兵器全面禁止・廃絶に向けたものと捉える には 無理がある。

核兵器のもたらす壊滅的な影響を体験した我が国では、多くの被爆者が今なお放射線の被害に苦しんでいる。極限であっても、使用を認め ることが許されるはずがない。今年4月に広島市で 開催される「軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)」に出席し、被爆者から託された願いに応え、被爆国として、核兵器廃絶に向けた指導的役割を果たすことを強く求める。

2014年1月23日

広島県保険医協会