マイナス改定は断じて容認できません 地域医療を立て直すために診療報酬・介護報酬の大幅な引き上げを求めます

pdfのダウンロードはこちら

社会保障費の自然増を大幅に削減する政府の方針のもと、2018年診療報酬・介護報酬改定をめぐってはマイナス改定の動きが強まっています。財務省は10月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、2018年の診療報酬改定について、薬価部分のみならず、本体部分も引き下げて、「2%半ば以上のマイナス改定」が必要との方針を示しました。また、同時改定となる介護報酬についても、マイナス改定の方向が打ち出されました。

財務省は、診療報酬は「医療機関の収入」である一方、「国民の負担」であるとして、「国民負担の抑制」を診療報酬引き下げの口実にしています。また、「賃金や物価の水準とくらべて高い」として本体部分のマイナス改定を主張しています。

しかし、診療報酬は医療機関の経営の原資であるとともに、患者さんが受ける医療の内容や質・量を規定するものです。患者さんに安全・安心な医療を提供するために、必要な人件費や設備関係費を確保できる技術料の評価が不可欠です。財務省の主張は、診療報酬の性格を一面的に描き、診療報酬引き下げに国民世論を誘導するものであり、容認できません。また、診療報酬本体の引き下げは医療従事者の人件費引き下げにつながり、この間の政府の賃上げの取組みとも矛盾します。

2002年~08年にかけて4回連続でマイナス改定が行われ、各地で「医療崩壊」といわれる事態を引き起こしました。その後も、この事態を立て直す抜本的なプラス改定はなされないまま、14年には実質マイナス改定、16年には再びマイナス改定が行われました。こうした状況の中で、11月8日に中医協に示された「第21回医療経済実態調査」では、16年度の一般病院の損益率はマイナス4.2%と「過去3番目に悪い数値」となり、厳しい実態が明らかとなりました。

また、一般診療所(個人を含む)の損益率は、13年度16.1%、14年度15.5%、15年度14.0%、16年度13.8%、歯科診療所(個人を含む)の損益率は、13年度23.5%、14年度23.6%、15年度21.0%、16年度21.6%と、診療所についても悪化の傾向がつづいています。また、医師不足と長年の診療報酬抑制を背景に、長時間勤務による医師の過労死が相次ぐなど、医療現場の過重労働が大きな問題となっています。介護についても、10月26日に示された介護事業経営実態調査結果では、16年度の全体の平均収支差率は3.3%で、前回調査(13年度,7.8%)と比較して大幅に低下しました。

マイナス改定によって医療機関や介護事業所の経営悪化、現場の労働環境の悪化がさらに進み、閉鎖や診療科の縮小などが起これば、患者さんや地域住民は医療へのアクセスが制限され、介護が受けたくても受けられないといった事態を強いられることになります。

私たちは、再び「医療崩壊」をまねく財務省の大幅なマイナス改定方針に反対するとともに、地域の安全・安心の医療・介護提供体制を無理なく保持するために、診療報酬技術料の10%以上の引き上げと介護報酬の大幅な引き上げを強く求めます。

2017年11月14日

広島県保険医協会