政府は、感染対策への責任を果たすために今すぐ、臨時国会の開会を

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 35℃を超える厳しい暑さが続く8月、西日本を中心に熱中症警戒アラートが発せられた。熱中症による救急搬送が、広島県で約1千人、全国約4万6千人(6月~9月・消防庁)であった昨夏と変わらぬ猛暑のなか、救急車の出動率は99%超となり、通報しても救急車が来ないという事態が生じている。広島県も「医療非常事態警報」を発出、救急車の適正利用が呼びかけられた。多くの地域で「救急搬送困難事案」が発生し、新型コロナの相談電話がつながらない、発熱外来に辿り着けないとの声も増加した。この夏、医療関係者のほとんどが既視感を抱いたのではないだろうか。

 冬の第6波が下がりきらないまま、変異種による第7波に突入し、感染者数はまたたくまに世界最高レベルとなった。もとより検査抑制傾向が強いわが国は、感染数が正確に把握されておらず、実際の感染者数はさらに多いとも考えられている。新型コロナ関連死亡者は8月半ばには累計3万5千人超、第6波を凌ぐ勢いで拡がっている。

 第7波の高まりを受け、政府は、「BA.5対策強化宣言」を打ち出し、軽症者の受診抑制、「全数把握」や類型の見直しを検討しはじめたという。しかし、補償のない「〇〇宣言」が繰り返されることが行動自粛につながるのか。メディアは「行動制限のない夏」と繰り返し、各地で観光客目当ての行事が盛大に執り行われている。医療現場の危機感とは真逆の空気がひろがり、感染防止に真摯に取り組んできた住民も、散乱する情報に振り回され不安と戸惑いのなかにあるようにみえる。

 これまで6回の感染爆発を経験しながら、なぜまた医療アクセスが遮断される事態となっているのか、変異種の性質だけが理由ではないだろう。水際対策は十分だったのか、保健所体制の強化は図られたのか、検査キットや治療薬不足への手立ては講じられていたのか。感染状況に地域差があるのは明々白々としたうえで、感染対策の差が受療機会の差となる事態は、国レベルで防止すべきであった。これまでの対策を省みて是正する機会は6回もあったというのに、結果として、感染者は医療現場や事業所内に拡がり、経済は停滞、通常診療や救急医療に影響を及ぼす事態を引き起こしてしまっている。

 これまで、病床ひっ迫には「重症」の判断基準を、発熱外来のひっ迫には「自宅療養」と称した「放置」をと、基準を変更して凌ぐことが繰り返された。しかしこれは、財政支出を極力抑え、解消したかに見せるだけの策でしかない。新聞社の分析によると、コロナ予備費として国会に報告された12兆円余りのうち、9割以上が具体的な使い道を追うことができないという。また、2021年度の一般会計決算概要で、使い残した歳出は30兆円近くになるという。コロナ対策に予算を配分していると見せながら、実際には使われていない。

 検査試薬や治療薬が迅速に供給されなくては、患者に応えることができない。発熱外来や入院医療を担えば、負担増となるスタッフの報酬もアップしたい。算定要件に記述や文書提供が増加するなか、感染症関連の事務作業の負担も軽減してほしい。原油価格高騰で医療材料が高騰し、感染症対応をしようがしまいが、医業経営は厳しい状況に置かれる。地域住民の健康を守る医療現場が抱える問題を把握し、国レベルで解決すべきこと、都道府県や自治体に財政を交付し対策を講じるものを精査し、早急に手立てを講じてもらいたい。オンライン資格確認など、急を要しない政策に貴重な予算を配分し、医療現場に混乱を持ち込む余裕があるなら、今すぐ、臨時国会を開会し、数多の知恵を集約した抜本的な対応策と、そのための財政支出を決断してほしい。