権力私物化の極み-『中間報告』に値しない『共謀罪』法案 の採決に断固抗議する

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15日未明からの参議院本会議において、「共謀罪」法案と呼ばれる「テロ等準備罪処罰法案」が成立した。自民・公明の与党は、委員会採決を行わないまま本会議に持ち込む「中間報告」という禁じ手を使った。しかし強引に委員会審議を打ち切った背景には、野党の追及が強まる「森友学園」「加計学園」問題を、国会閉会によって封じようという意図が透けてみえる。また、報道によれば、間もなく告示となる都議選への影響を恐れる公明党との取り引きもあったという。国民の代表機関であり、国権の最高機関である国会を軽視し、「再考の府」として、権力の抑制と均衡の機能を常に確保し、時間をかけた審議によって行政監視機能を果たす機関として存在していた参議院の役割も否定する与党国会議員の愚行であり、断じて許すことはできない。

修正を繰り返し迷走した「共謀罪」審議では、その処罰対象が、捜査当局の判断によって、市民団体や労働組合はもとより、一般市民にも及ぶことが明らかになっている。また、国際組織犯罪防止条約締結に必須としていた政府の説明も、参考人質疑や条約に深く関わったニコス・パッサス氏の説明などで明確に否定されている。そして、国連特別報告者からも、表現の自由を制約する恐れがあると強い懸念を示す書簡が発せられている。安倍政権の独裁性は、世界からも危険視される事態となっているのである。

そもそも、国会審議を混乱させている「森友学園」「加計学園」問題は、安倍政権による権力の私物化が本質であり、これ自体の真相究明に真摯に向き合うことでこそ、疑念が晴らされることになるのではないか。しかし国民の目を逸らし、包み隠すことに終始する政府の姿勢は、もはや独裁政権というべきに値する。

刑法の専門家は、行為も結果もないものを処罰する「共謀罪」法案は、刑法の仕組みをも歪めるものと指摘する。我が国の歴史上の過ちは、政治を私物化する独裁政権が、このような法律を手にしたことにあったのではないか。

私たちは、憲法に定める国民の権利を守り、社会保障の拡充と平和を希求する団体として、立憲主義と民主主義を蹂躙する政権が、「共謀罪」法案採決を強行したことに強く抗議する。また、国会法の例外規定を濫用した「中間報告」を認めず、法案成立は無効であることを主張する。

2017年6月15日

広島県保険医協会