「国民主権」と「基本的人権の尊重」を軸とした社会保障の拡充を求める

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 7月10日、参院選挙が行われ、改選124議席と神奈川選挙区の欠員補充、合わせて125議席の議員が決定した。自民党は8議席増、公明党は1議席減で、与党は139から146議席へと増加した。「改憲」を目指すと公言している政党でみると、11議席が増えたことになるようだ。

 選挙結果を受け、岸田首相は、11日の記者会見で「できる限り早く発議にいたる取り組みを進める」と表明した。一方で、共同通信が11~12日に行った世論調査の結果は、「改憲」を「急ぐ必要はない」との回答が58.4%、「急ぐべきだ」とする回答は37.5%となった。読売新聞の調査でも、「今後岸田内閣に優先して取り組んでほしい課題」としてあげられたのは、「景気や雇用」「物価上昇への対策」「外交や安全保障」「年金など社会保障」「少子化対策」が上位となり、憲法改正は37%で最下位であった。報道機関は世論調査の度に憲法改正を問うが、国民の関心は一向に高くならない。何かを煽ろうとしているのかとも勘ぐってしまう。

 新型コロナの影響で、事業が破綻したり雇用を失ったりした人々、アルバイト先を失い大学を続けられなくなった学生、子育て世帯が生活に困窮する実態も報告されている。医療機関でも患者の減少と経費の増加からくる厳しさを感じていることだろう。そこに物価上昇と年金削減などがのしかかり、ほとんどの世代が今の生活の苦しさや将来不安を抱えている。そういうときには、今よりも悪くなるかもしれない「変化」を恐れ、既知こそ「安定」と、「これまで通り」を選択しがちなのではないだろうか。

 報道機関はこれまで、政権政策の総括を避け、国会論戦の実態も知らせてこなかった。選挙前に、各党の政策の違いを十分に浸透させ、有権者に投票を促そうとしたメディアがあっただろうか。Twitter上では選挙後の「開票特番」ではなく、選挙前の報道を求める声があがり、一部のテレビがこれに応えた。今回の参院選の結果は、情報のないなかで、「現状維持」の選択をしたとも受けとめられる。

 選挙直前、街頭で演説中の元首相が銃撃され死に至るという凄惨な事件が発生した。近くは長崎市長(2007年)、民主党の石井紘基衆院議員(2002年)など、政治家を襲撃する事件はあったものの、事の次第が明らかになるにつれ、さらなる事態が国民を震撼させている。過去に刑事事件や民事訴訟の対象となり、現在も莫大な被害金額を生むような反社会的な宗教団体と政党の係わりが、白日の下に晒されつつある。全国霊感商法対策弁護士連絡会の記者会見では、政治活動への動員や秘書として介入する実態も報告された。2006年、団体に関わる重点監視の表現が公安資料から消え、1994年から拒否されてきた団体の名称変更は、2015年に認可された。いずれも安倍政権時代である。科学や学問を否定し、「改憲」を党是としてきた政権与党の方針と、当該団体の教義が重なることも重要視されている。

 参院選の結果を受けて岸田首相は、安倍元首相の「思いを受け継ぐ」と述べた。臨時国会では、反社会的な組織との関係を詳らかにしたうえで、早急に是正を図る。それなくして、「改憲」を議論の俎上に載せることなどあってはならない。感染対策、医療支援や生活支援、猶予のない気候変動や少子化への対策など、課題は山積する。軸足に疑念が生じる状況で有効な策が打てるはずはなく、わずかな期間の臨時国会で終わろうとは浅慮な判断である。そして私たちは、絶望に覆われる人を一人でも減らせるよう、「国民主権」と「基本的人権の尊重」を軸とした社会保障の拡充要求の実現と、個人を認め助け合える社会の形成に力を注ごう。