「核兵器禁止条約」日本政府の早期批准を求める~主権者である私たちが行動を~

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10月24日、ホンジュラスの批准により、核兵器禁止条約の発効条件である批准国数50か国が満たされた。条約は2021年1月22日から効力を生じることとなる。

2012年以降、スイスなどによって核兵器の非人道性に関する共同声明が発せられ、ノルウェー、メキシコ、オーストリアでは核兵器の非人道性に関する国際会議が開かれた。市民による核兵器廃絶を求める取り組みは草の根のごとく拡がり、2017年、ICAN(核兵器禁止条約の交渉開始・支持のロビー活動を行う目的で設立された国際的なキャンペーンの連合体)にノーベル平和賞が授与された。広島市出身でカナダ在住のサーロー・節子氏は、授賞式の演説で、自身の凄惨な被爆体験を語り、「核の傘」に依存する国の態度を批判し、条約への参加を求めた。

オーストリアやメキシコなどが主導し2017年7月に採択され、122の国や地域が賛成し成立した核兵器禁止条約は、核兵器の開発や生産、取得、実験、使用、保有、移転などに加え、「威嚇」までを法的に禁じる内容となっている。被ばく者と核実験による影響を受けた人々の「容認し難い苦しみと損害」に目を向け、核兵器の使用が「壊滅的な非人道的結末」を招くこと、「核兵器がいかなる状況下でも二度と使用されないよう保証するための唯一の方法である核兵器の完全な廃絶が必要である」と指摘している。被ばく者に寄り添う核兵器禁止条約の制定により、広島・長崎への原爆投下から72年を経て、ようやく世界が核兵器廃絶への一歩を踏み出したことを心から喜ぶとともに、核兵器廃絶を願う世界中の人々の地道な努力と、被ばく者の方々の献身的な取り組みに心から敬意を表するものである。

2020年11月現在、被ばく国である日本は、核兵器禁止条約に参加していない。これについて外務省は、「日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要」という考えの下で、「米国による核抑止力の正当性を損ない」「日本の安全保障にとっての問題を惹起」すると説明している。現在、北海道から沖縄まで、全国130か所に米軍基地(うち米軍専用基地は81か所)が置かれ、住民の生活や生命を脅かす事件や事故は後を絶たない。日米地位協定により住民の権利が侵害され、不公平な状況が継続されているのが現実である。有事の際に米国が助けてくれるという政府の説明は夢物語に過ぎず、大国の摩擦が第三次世界大戦に至る可能性、核兵器の使用が地球規模の破壊をもたらす危険性の方が、現実味がある。「核の傘」は、過去の反省に立つことを拒み、米国追随から脱却できない日本政府の言い訳に過ぎないのではないか。

広島県知事は、2020年3月、日本政府に「核兵器禁止条約への署名及び批准に関する要望」を提出し、広島平和記念式典で「核抑止論は虚構に過ぎない」「人間の手で変えることができる」と行動を呼びかけた。条約の発効確定後の11月20日、松井広島市長と田上長崎市長は外務省を訪問し、政府に対し核兵器禁止条約への署名・批准を強く求め、当面のオブザーバー参加も求めている。広島の地で被ばく者医療に携わってきた医師・歯科医師の団体である広島県保険医協会は、被爆地首長らの姿勢を評価するとともに、日本政府に条約の批准を強く求める。

原爆から75年が経った今、私たちに課せられた使命は、被爆体験の継承とともに、核兵器廃絶の切なる願いの実現に向け努力していくことである。日本政府の行動を転換させるのは、主権者である私たち国民であることを自覚し、2021年1月発効の核兵器禁止条約が世界に拡がるよう、一人一人ができることを探し取り組んでいこう。