エネルギー価格、物価高騰への緊急的な財政支援策を~歯科医療費の総枠拡大を急げ

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 エネルギー価格や物価の高騰が医療機関の経営を圧迫している。当会でも実施した保団連「電力料金等の高騰に関する医療機関緊急調査」には、電気料金について、95%の医療機関が「上がった」と回答しており、そのうち38%の医療機関が昨年同時期と比較して1.1倍~1.3倍と答えている。ガス、灯油の料金でもガス料金で35%、灯油で29%が、昨年同期比で1.1倍~1.3倍としている。病院・有床診療所では患者に提供する食材料費への影響も大きく、8割が「上がった」とし、1割以上の高騰は50%を超え、1.7倍以上と回答する医療機関もある。医療機関はこの急激で深刻な状況を、「照明の間引き、こまめな消灯」(64%)、「空調温度の調整」(60%)などで凌いでいる(数値は全国の調査結果)。

 広島県保険医協会の調査結果をみると、「光熱費の削減にも限界がある」、「感染対策を徹底しながら空調温度を調整することに苦慮している」、「経費増が賃金引き上げの弊害となっている」などの意見が寄せられており、個々の医療機関の経営努力だけで乗り切ることは困難であり、地域医療の維持に影響を及ぼしかねない状況が浮き彫りになった。

 エネルギー価格の高騰を受け、治療やうがいのために常時水を使用し、技工物の切削・研磨や歯垢除去のための器具に電力が必須となる歯科では、その影響がさらに大きくのしかかる。感染対策のために患者毎に取り換える医療用手袋などの値上がりもあり、経費の増加は深刻なものとなっている。

 政府は3月末、物価高騰に対する追加策に地方創生臨時交付金の増額・強化を決定し、厚生労働省から自治体に、医療機関等に対する物価高騰対策支援を推奨事業として「積極的な活用を検討」するよう、あらためて事務連絡が発出された。広島県では昨年度に原油価格・物価高騰に係る医療事業者補助金制度を創設したが、調査には、長引く物価高騰にこの補助金額では到底賄えないという現場からの声が多く寄せられている。

 医療行為は定められた診療報酬のもとで行われ、物価高騰を価格に転嫁することはできない。さらに新型コロナによる感染不安で受診抑制が強まり、オンライン資格確認「義務化」で経費支出が増加するという状況も重なり、長年、低診療報酬に据え置かれている歯科にとってエネルギー価格の高騰はさらなる追い打ちをかけるものである。

 2022年診療報酬改定では、基本診療料で、施設基準の届出を条件に院内感染防止対策の評価の点数が引き上げられた。しかし新型コロナ以前より感染防止対策を徹底してきた歯科医療機関に対し、対策コストに見合う引き上げと言えるものではなかった。「医療安全を確保するために─院内感染対策費の検討」(日本歯科医療管理学会雑誌第51巻第1号40-45(2016))によると、患者一人当たりの院内感染対策費1,058円に対して、再診料45点+外来環4点=490円(当時)とあまりにも隔たりが大きいと指摘している。また、歯学系学会社会保険委員会連合の「歯保連試案2021」は、診療行為別に人件費や材料価格などを積算し単価を試算しているが、それをみると、抜髄8,546円(単根管、時間24分)で現行点数232点(2,320円)はあまりにも低いといえる。

 このままでは医療を支えるスタッフの確保も厳しいものとなり、感染症が再燃すれば人口の少ない地域から医療の灯が消えることも危惧する。安全・安心な歯科医療を維持していくための歯科医療費の総枠拡大と、診療報酬での補てんや補助金など、あらゆる策を講じて医療機関への支援を急ぐよう強く求める。