医療保険による外来維持期リハビリを復活し、患者に必要なリハビリの提供を

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厚生労働省は、2014年度の診療報酬改定時に、維持期リハビリを算定している患者について、介護保険のリハビリに移行した場合に算定できる「介護保険リハビリテーション移行支援料」を新設した。2016年度改定時には「目標設定等支援・管理料」を新設し、この点数を算定していない場合、リハビリの算定点数が1割減算となる仕組みを設定した。維持期リハビリ打ち切りによる強引な介護保険への誘導策は、保団連等の運動によって、経過措置の期限延長を繰り返す状況となっていた。3度の経過措置がとられた後、2019年3月末に外来維持期リハビリが廃止され、4月以降は介護保険のリハビリに移行することとなったが、必要なリハビリの提供への懸念が強いことから、保団連では実態把握のための「要介護被保険者の外来維持期リハビリ算定終了の影響について」アンケートを実施(当会では2019年10月から実施)。全国的に外来維持期リハビリ廃止による影響が見られることが把握された。

アンケートではリハビリの算定上限日数に達した日以降の経過について、やむを得ず介護保険へ移行したケースや消炎鎮痛等処置に切り替えたケースがあったものの、医療保険でのリハビリ継続を希望するため介護保険へ移行せず終了した患者や介護認定を受けていた患者が認定を取り消すケースなども多数、存在した。また、「他の介護サービスを利用しており、単位が足りずリハビリが実施できない」、「医療保険でのリハビリができなくなり身体機能が低下」など、外来維持期リハビリが継続して実施できなくなったために状態が悪化した事例も多数寄せられている。介護保険の通所リハビリに移行するにあたっては、個別リハビリを実施する施設自体が少ない、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の配置が少ないと回答している医療機関も多く、そもそもリハビリが実施できないといった実態もみられる。

このような事態が生じる原因には、介護保険制度そのものの問題がある。介護保険では要支援・要介護度に応じて1ヶ月の支給限度額区分が設定され、その限度額の範囲でケアマネジャーがケアプランを作成するが、医師がリハビリの必要性を認めても、ケアプランに位置づけられなければ実施できない。また、医療保険と介護保険ではリハビリの実施内容も異なっており、患者の病態に応じたきめ細かなリハビリが提供されているとは言い難い。2019年9月18日に開催された中医協では、診療側委員から「介護保険のリハビリに移行した場合、リハビリの質が担保されているのかを追跡調査などで調べる必要がある」との発言があり、それを受けた医療課長は、非常に重要な指摘であると認め、「質の高いリハビリを受けているかどうか、何らかの形で分かるようにすることを検討したい」と述べている。通所リハビリの施設についても、PTら専門職員の確保が困難なことや現状の介護報酬では採算性が低いなどの理由で開設が進んでいないのが実態だが、これらの課題解決の方向性は示されていない。

保険医協会・保団連は、維持期を含めたリハビリは、医師の指示の下で、PT、OT、STが実施する医療行為であると主張してきている。外来維持期リハビリの廃止についても、リハビリの質の低下などが懸念されることから、厚生労働省に繰り返し撤回を求めてきた。アンケート結果は、私たちが懸念していた困難事例が全国で生じていることを明らかにしている。厚生労働省は早急に実態把握を行うとともに、外来維持期リハビリを復活させ、患者にとって必要なリハビリが継続して医療保険で提供できるようにすべきである。