医療現場の実態をふまえ、オンライン資格確認システム導入「4月義務化」の撤回・延期などの対応を求めます

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 貴職におかれましては、連日医療行政の重責を果たされていますことに敬意を表します。
 広島県の医師・歯科医師の団体である当会は、医療現場に著しい混乱を持ち込むことが危惧されるオンライン資格確認「義務化」について、緊急に要請いたします。
 中央社会保険医療協議会では、12 月末にオンライン資格確認の導入状況を調べ、地域医療への影響に鑑みて、義務化を除外する医療機関の範囲や経過措置などを検討することとされております。しかしながら、これまでの厚生労働省懇談などでは、対処仕切れない問題が山積していることが把握されています。
 貴職におかれましては、医療現場の深刻な状況をご理解賜り、また地域医療に混乱を生じさせることを防ぐためにも、要望項目にある措置を、早急に講じてくださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

1.10 万近い診療所が間に合わない
 既に、義務化対象(紙レセプト以外)のうち 95%近い診療所が顔認証付きカードリーダーを支払基金に申し込んだものの、オンライン資格確認を運用開始した診療所は3割前後に過ぎません。残りの6割(10 万施設)近い診療所が来年4月までに運用開始することは客観的に見て困難・不可能な状況です。

2.ベンダーも足りない
 保団連の会員調査(医療機関 8707)では、残りのうち大半の6割を占める準備中にある医療機関では、2件に1件が「来年3月末までに導入できるか不明」「来年3月末までには導入できない」と答えています。地域で対応できるシステムベンダー業者が限られるなど、医療機関にとっては如何ともしがたい状況があります。

3.1割強で閉院を検討
 同様に、15%を占める導入しない/できないと回答した医療機関には、小規模な施設や高齢(60 歳代以上)の医師・歯科医師が多く、「スタッフ不足で対応できない」「閉院予定で導入不要」「セキュリテイ対応に不安」などの困惑が多く聞かれます。各保険医協会の調査によれば、高齢医師等を中心に1割前後で閉院も検討するとの声が出ています。ベテランの医師・歯科医師を失うことは、患者・地域にとって甚大な損失です。「閉院を決めた」はじめ、こうした相談が連日、保険医協会・保団連に寄せられています。

4.システムトラブル頻発
 3割前後の運用開始した医療機関のうち半数近くにおいて、「顔認証付きカードリーダーの不具合」「有効な保険証でも『無効』と表示された」など深刻なトラブルが多く報告されています。支払基金が交付する3社のカードリーダーでの起動不全や医療機関への相次ぐサイバー攻撃も重なり、医療機関はシステム導入・精査に慎重にならざるをえません。


要望項目
1.2023 年4月以降も全ての医療機関が医療提供を継続できるよう、2023 年4月からの「義務化」の撤回・延期を早急に発表すること。除外規定を設ける際は、このことを理由に医療機関が閉院することのない除外措置を決定・発表すること。
2.補助金の申込期限(年内にカードリーダー申込み、2023 年3月末に整備完了など)を延期すること。
3.医療現場の実態を正確に把握できるよう、ヒアリング・公聴会を実施すること。