参院選結果を受けて 投票率向上へ、一層の世論喚起を

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 7月21日に行われた参議院選挙の結果について、翌日の記者会見に臨んだ安倍首相は、前回参院選を上回る議席数となったことを「力強い信任をいただいた」と評価した。憲法改正の議論をすすめることを是とする国民の審判が下ったと話し、一部の野党に同調することを呼びかけている。

 今回の選挙は50%を割り込む低投票率に終わった。過去最低の1995年(44.52%)以来2回目、前回参院選から5.9ポイント低下した数字である。悪天候の影響や合区導入、統一地方選からの選挙続きなどを要因とする報道もみられるが、今選挙に強い関心を持っていた層は、理由は他にもあると感じているのではないだろうか。

 テレビ番組を調査・分析するエム・データ社によると、公示日以降、地上波が選挙を取りあげ放送した時間は23時間54分。2016年は30時間37分、2013年は38時間32分で、前回に比べ7時間近く減っているという。ワイドショーは選挙前にも関わらず視聴率がとれる芸能分野の話題を繰り返し、報道番組でも著しく減少しているという調査結果である。「テレビが選挙を遠ざけた」という方が、有権者の肌感覚に近いものがある。

 このような中、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」が注目を集め、候補に立てたALS患者ら2人の議員を誕生させることとなった。この山本氏が選挙期間に新宿で1000人の聴衆を集めたことをどれだけの人が知っているだろうか。現政権のすすめてきた特定秘密保護法をはじめ、TPP協定、水道法、カジノ法、種子法等々は見直しや廃止、消費税廃止、全国一律の最低賃金(1500円)によって暮らしの底上げを図るという政策を掲げ、テレビ報道がほとんどされない中でも一定の支持を得た。「打倒安倍政権」を旗印に「統一候補」を擁立して闘う野党共闘でも、6年前の2勝から10勝へと、期待を次へつなげる結果を出している。

 当会が役員学習会に招いたこともある上脇博之教授(神戸学院大学法学部)は、中選挙区制時代に比べ、小選挙区制の下での投票率低下が著しいと分析している。小選挙区制は多くの死票を生み、それが国民の関心を下げているというのである。上脇教授は報道の取り上げ方で投票率が変化する可能性にも触れているが、穿った見方をすれば、選挙報道が萎縮すれば低投票率を生み出すことができるとも言えるのではないか。

 民意が反映するといわれる比例代表選挙をみると、今回の選挙で自民党は240万票を減らし(公明党も103万票減)、得票率は自公合計でも50%に届いていない。有権者の5割に満たない投票率で、さらにその50%以下の支持ということである。改選議席数を下回り、自公の議席を合わせて過半数を超えたとはいえ改選前から6減。改憲に要する3分の2にも届いていない。「信任を得た」というには自己評価が高すぎるのではないか。

 しかしこの「評価」を梃に、消費税増税に突き進もうとしている。国民の消費は増税前の駆け込み購入さえできないほどに冷え切り、医療機関は「損税」の負担増に悲鳴をあげている。追加の経済政策で「いただいた消費税は全てお返し」(安倍首相)するのであれば、何のための消費税増税なのか。さらなる医療・介護・年金の負担増政策も待ち構えている。

不都合な真実を国民から隠すことに長けた政権に、これ以上、国民の生活や医療や介護現場の実態と乖離した政治を続けさせるわけにはいかない。投票率アップのための世論喚起、目的を果たすための野党共闘の強化。今回の参院選で明確になった課題に取りかかろう。