核兵器禁止条約の早期発効と核被害者訴訟の勝訴を実現しよう

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74回目の原爆の日が近づいている。2017年に国連で核兵器禁止条約が採択され、今年中にも発効する見込みとなっている。核保有国や日本など核の傘に依存する国はこれに反対し、核をめぐる国際情勢は厳しい状況にあるが「核は人類と共存できない絶対悪である」との国際的規範を確立させる事が重要であり核軍縮を促進できる。広島市民と共に早期発効を目指して行動しよう。

被爆者の多くが80才を越え、92%が何らかの手当を受給しているが、がんなどを発症して原爆症と認定され医療特別手当を受給しているものは5%に過ぎない。原爆症集団訴訟で国が敗訴し、がんなどの原爆症認定率は80%以上に改善されたが、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、白内障、肝臓病は従来と同様の30%以下であった。

申請を却下された121人の被爆者によって2007年からノーモアヒバクシャ訴訟が始まった。2013年に国が認定条件を緩和し25人が認定され、6月現在勝訴確定59人、敗訴確定11人で残る26人のあらそいが大詰めを迎えている。

原告たちは、現行の原爆症認定制度を廃止して、すべての被爆者に病状に応じた「被爆者手当」を支給することを求めている。原爆被害から立ち上がり生き抜いてきた被爆者にとって当然の望みであり、早急に実現させなくてはならない。

被爆地域は広島ではほぼ半径4kmの円形であるが、長崎は旧長崎市行政区域に沿って爆心より南が12kmに及ぶ不整形である。長崎では1974年に北、76年に東西に健康診断特例地域が新設され被爆者認定に道が開かれたが、広島では被爆直後に気象台職員が自転車で回って聞取り調査をおこなって決めた「大雨区域」が、健康に影響のある「黒い雨」が降った地域として健康診断特例地域に指定された。調査にあたった元気象台職員は「大雨、小雨区域の線引きは暫定的なものだったが後になって正確なものであると一人歩きをした。厚労省がそれをもとにして、いろいろやられたが原爆のような大きな現象があった場合、気象はどう変化したかの調査だから医療関係に使われると目的が違っている」と語っている。

実際には黒い雨は広範囲に降って住民の健康を害しており、広島市は黒い雨被害者の要望に応えて2008年に大規模調査をおこなった。その結果、降雨範囲は「大雨地域」の6倍、「小雨地域」の3倍となり、広島県・市と周辺自治体など9団体が2010年7月に援護対象地域の拡大を厚労省に要望したが、科学的根拠がないとして却下された。

2015年に「黒い雨」被爆地域の拡大を求める訴訟が64人の原告によって始まり、原告は88人に増加している。

「黒い雨」に含まれる残留放射能により住民は健康を害している。放射能は目に見えないが、放射性物質を含む「黒い雨」は目に見え、記憶に強く刻み込まれており残留放射能の影響地域の特定に有効である。簡単な調査をもとに引かれた楕円形が被爆地域となっている現状は誤りであり、後の詳細な調査に基づいた地域に改めて被害者を救護するとともに、被爆の実相の解明と核兵器廃絶への道しるべとしなくてはならない。

福島原発事故により避難を余儀なくされた人たちが、住み慣れた地域で平穏に暮らす権利を奪われたことに対して国と東京電力に賠償責任を求める訴訟が全国で起こっており、広島でも2014年から13世帯33名が提訴している。各地で避難者勝訴の判決が相次いでいるが、原発政策を推進した国の責任については司法判断が固まっていない。広島訴訟では「原発事故によって居住地が放射線物質で汚染された責任は国にある」ことを認めさせようとしている。

3つの核被害者訴訟を支援し、核なき世界を一刻も早く実現させよう。