消費税増税を早急に見直し、社会保障の充実による所得再分配の強化を求める

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10月1日から消費税が増税された。5%から8%の増税を負担する税額で比較すると25%増となる(100,000円×8%=8,000円が10%では10,000円となり25%増)。参院選前の党首討論で安倍首相は、「老後の安心の上においてもどうしても消費税増税が必要だ」と語ったが、景気後退や軽減税率への対策を不安視する声に向き合っていたようには見えなかった。一方で野党は、「個人消費が冷え込み続ける中で、消費増税は大変大きなマイナスを与える。軽減税率の恩恵を受けるのは所得が多く、たくさん消費する人」と増税に反対していた。国民は与野党の主張を比較できるほど、選挙に注目できていただろうか。

内閣府が8月末に行った世論調査で、「医療・年金等の社会保障の整備」が7年連続1位(66.7%)、前年よりも増えている。5%への引き上げ時、政府は「引き上げ分の全額を社会保障の充実と安定に使う」と広報した。しかし医療に従事する者にも国民にも、その実感は乏しい。2014年に5%から8%となった際の消費税の税収(5兆円)の内、社会保障の充実に使われたのはわずか5千億円。2017年度は、8.2兆円の内1.35兆円。一方で法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から引き下げが続き、2018年度からは23.2%(実効税率29.74%)となっている。法人税減税の穴を消費税が埋めていると国会でも指摘されている。消費税増税以降、健保本人の自己負担割合は1割から3割となり、高齢者医療制度の改悪も続いている。選挙が終わったことを見計らったかのように、公的年金の「財政検証」が公表され、28年後の「所得代替率」は2割近く目減りするという。介護保険の要介護の給付サービス抑制や、一部処方薬の保険外しなど、介護・医療の公的給付を縮小する議論も始められたようだ。

大規模な土砂災害に見舞われた広島はもちろん、台風や地震による被害によって生活基盤を破壊された多くの住民が、復興と言えるまでに立ち直るのは容易ではない。原発事故による自主避難者や帰還困難区域の世帯では、住宅支援が打ち切られてきている。仕入れに係る消費税を他に転嫁できない医療機関は、診療報酬での補てんも「損税」解消には及ばず、消費税による新たな負担が受診抑制をさらに広げることを危惧する。お金が「足らない」ことばかりが取り上げられ、適切に使われているのかを検証する報道が見られないことにも違和感がある。

私たちには納税の義務が課せられている。国民は、税金がもつ「所得税や相続税の累進構造等を通じ、歳出における社会保障給付等とあいまって、所得や資産の再分配を果たす(財務省パンフレット掲載)」という役割を信頼しその義務を果たしている。しかしこの間、日本の税制は“逆所得再分配装置”と化しているという。さらに厚生労働省は、2005年から所得改善度の低下を小さく見せようと計算手法を変更、2005年以前との数字の連続性も目につかないようにしているようだ。

保険医協会・保団連は、逆進性が強い消費税では低収入の人ほど負担が重くなる、「税と社会保障の一体改革」の三党合意は社会保障拡充を税収の範囲に限定するなどとして反対の声をあげてきた。医療・介護をはじめとした社会保障は、財務省も述べているように所得再分配の機能を高くもつ。国民生活が困難なときにこそ、この機能を有効に使うべきである。増税された今、あらためて、消費税増税を早急に見直し、社会保障の充実による所得再分配の強化を求める。