衆議院議席の絶対安定多数は独裁を許すものではない-主権者の国会監視で国民のための政治を

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 1月23日解散、27日公示、2月8日投票というスピードで実施された衆議院議員選挙は、任期4年の3分の1にも満たない、現行憲法下で3番目に短い期間で行われた選挙であった。受験、災害級の大雪、海外在住者などの事情で、すべからく主権者に与えられるべき投票権が公平性を欠くものになったことについて、解散を決した内閣は責任を負うべきではないか。

 投票率約56%という選挙は、自民・維新で352議席、自民単独でも316議席という結果に終わった。委員数でも過半数を確保できる「絶対安定多数」(261議席)を確保し、参院が否決した法案について、衆院で再可決することができる3分の2をも超えた。しかし内情をみると、比例区での自民党の絶対得票率(有権者を母数とする得票率)は20・37%にとどまっており、議席数が内閣支持を示すものとも言えない。さらに小選挙区では、全投票数の45%前後で65~85%の議席を占めており、小選挙区制のもとで得票率と議席数に大きな乖離が生じている。

 経済学で使われる「ハーフィンダール・ハーシュマン指数(Herfindahl-Hirschman Index,HHI)」で、近年の国政選挙をみると、今回の選挙が著しく乖離していることがわかる。研究者は、第一党が議席の多くを占めれば安定した政権運営ができるかもれないが、政党間の競争がなくなれば、政策の質や議員のモラルが低下するリスクもある。後者のリスクに鑑みれば、HHIは低いほうが健全な政治が望めるともいえると説明している。

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)

衆議院総選挙

得票集中度

議席集中度

乖離(増幅率)

2005年第44回

3690

5673

+1983

2009年第45回

3781

5889

+2108

2012年第46回

2621

6358

+3737

2014年第47回

3079

5862

+2783

2017年第48回

2941

5697

+2756

2021年第49回

3323

4638

+1315

2024年第50回

2541

3478

+937

2026年第51回

3049

7428

+4380

 選挙前には医療費削減策で国民の批判が高まり、経済界からも「高市下ろし」の風が吹いていた。しかし野党第一党は与党を離脱した政党と新党結成に動き、これまでの「安保法制違憲」「脱原発」を転換、明確な対抗軸を示せなかった。失望や不信の拡大は支持者でも7割程度、無党派層で14・3%(2024年25・2%・2026年自民党21・8%)と支持を逃すこととなった。しかしそうであったとしても、2万票足らずで当選する一方で10万票を得ても落選する選挙制度の不公平な実態を直視し、制度改革に向けて何ができるかを考えるべきであろう。まずは絶対安定多数を得た高市政権が、「悲願」とまで言った食品の消費税減税にどう取り組むか。隣国との経済摩擦は、抗菌薬原薬を輸入に頼る医療に影響を及ぼすことも危惧される。議席数に奢らず抑制的な政権運営が行われるか、主権者として、国会監視の役割を果たそう。