金パラ「逆ザヤ」の即時解消、実態に即した診療報酬体系の構築を

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「金銀パラジウム合金」(金パラ)の逆ザヤの問題が深刻化し、歯科医療機関の経営を圧迫している。歯冠修復物、欠損補綴物の材料として使用する金パラは、市場価格の高騰が続き、購入価格が保険償還価格(告示価格)を上回る「逆ザヤ」が拡大している。購入価格と告示価格の差額は歯科医療機関が負担することとなり、全国の歯科医療機関が窮状を訴えている。

保団連は「金パラ『逆ザヤ』シミュレータ」を用いて調査を行い、当会でも広島保険医新聞を通じて協力を求めた。昨年10月時点の告示価格50,250円(30g)に対して、購入価格は63,989円で、逆ザヤは13,739円。2020年2月時点では31,147円の逆ザヤとなっている。わずか4ヶ月の間に逆ザヤは2.2倍超となり、保険償還率は78%から62%に圧縮されている。

告示価格の改定は、2年に1回の診療報酬改定時に実施される「基準材料価格改定」と、その後の6ヶ月に1度、市場価格の変動率が±5%以上になった場合に行われる「随時改定」で見直しが行われる。2020年度改定時の改定は、昨年9月の金パラの市場価格調査及び10月から12月末までの金パラ素材価格の変動を反映したものとなるため、1月以降も大幅な上昇を続けている購入価格は考慮されないことになる。このままでは良質な歯冠修復・欠損補綴治療を提供していくことが困難となり、患者・国民に重大な不利益を及ぼしてしまうことになる。一刻も早く逆ザヤを解消するよう、政府・厚労省が緊急の対策を講じるべきである。

高齢化の進行に伴い、口腔機能の維持・回復のための歯冠修復・欠損補綴の重要性は増し、近年の改定では医科とともに在宅誘導の方向が強まっている。しかし、在宅歯科医療では、トレー、ミラー、ピンセット、探針などの基本セット、照明器具、薬剤・薬品、切削器具、血圧計、パルスオキシメーターなどのバイタル測定器、その他グローブ、聴診器、ごみ袋など、患者の要求や環境、治療内容に対応するための携行機器は多岐に渡る。また、切削器具の患者毎の取り替えなど診療室と同様の感染防止対策に努め、安心・安全な歯科医療を提供するには、厖大な準備と労力(費用)を要する。しかし、歯科訪問診療料の算定要件には、医科にはない診療時間の20分要件が課せられ、20分未満の場合は所定点数の100分の70に減算となる。患者の年齢や体調、疾患の状況を問わず、一律に20分要件を課すことは、診療実態にそぐわず不合理である。また2018年度改定では、医科で既に導入されていた「単一建物」の考え方が、訪問歯科衛生指導料に導入された。建物毎に1人・2~9人・10人以上で診療報酬が区分され、単一建物内で複数の患者を診た場合は、人数が増えるほど区分ごとに指導料が低くなる。医科にも言えることだが、必要な医療を適切に提供している以上、同一の評価を行うようにすべきである。

訪問歯科では、歯科的技術や知識だけでなく、人員と時間、機器・機材、外来とは異なる感染防止策やコミュニケーション能力など、幅広い対応が歯科医師に求められる。しかし不合理な診療報酬上の評価や要件という縛りに苦心している状況で、患者の求めに応じた医療を提供することは困難という声もある。

金パラ逆ザヤの解消は一刻の猶予もならない問題である。全国の保険医協会で、医師・歯科医師がともに、署名や国会要請などに取り組み、即時解消を求めている。不合理な逆ザヤや診療報酬の仕組みを改定し、実態に即した診療報酬体系が構築されることを強く求める。