2024年度診療報酬改定-中小病院・診療所を窮地に追い込むマイナス改定を早急に見直し、大幅引き上げへ

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 2024年度診療報酬改定(今次改定)の改定率は、本体部分を0.88%引き上げるとしたが、薬価・材料価格の改定分(▲1.00%)を含めると、全体で0.12%の引き下げとなる。診療報酬全体のマイナス改定は、2014年度の消費税増税対応のプラス分を除き6回連続となった。

 本体部分は、①生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化で0.25%を引き下げ、②医療従事者の賃上げ・ベア対応で0.89%(+0.61、+0.28)を引き上げる。これらが改定率の大半を占めるが、医療関係職種(医師、歯科医師、薬剤師、看護師を除く)の月給与平均は、全産業平均を10%近く下回っており改善には程遠い。また、③入院時の食費基準額の引き上げ(+0.06%)は患者負担増(原則1食30円、低所得者には10円~20円)となり、④残りのわずか+0.18%が技術料に配分される改定内容である。

 2月14日、中央社会保険医療協議会は武見敬三厚労相に今次改定の答申を行い、全容が明らかになった。医科では200床未満の病院、診療所の多くが算定する特定疾患療養管理料及び特定疾患処方管理加算の対象疾患から、糖尿病、高血圧、脂質異常症が除外されることが示された。3疾患は同管理料・同加算の算定の9割強を占める。この他、生活習慣病管理料と外来管理加算の併算定が不可とされ、また、特定疾患処方管理加算は、28日以上の処方とリフィル処方箋の発行時に算定が限定されたうえ、点数が引き下げられた。厚労省が示した診療所の外来症例では、改定後の請求点数が下がっており、中小病院、医科診療所は本体もマイナスとなることが強く危惧される。

 歯科では外来環が廃止され、歯科外来診療医療安全対策加算と歯科外来診療感染対策加算に分離・整理。か強診は名称変更と、口腔機能管理の実績などが施設基準要件に追加される。かかりつけ歯科医による口腔機能管理の評価を名目に、歯管のエナメル質初期う蝕管理加算が廃止され、エナメル質初期う蝕管理料、根面う蝕管理料(いずれも新設点数)に口腔管理体制強化加算が新設される。F局と歯清が別途算定可とされるが改定後はマイナスとなる。また、FMCや前装MCなどが補管の対象外とされるなど、大規模で複雑化する見直しとなることは間違いない。

 入院医療は、急性期一般入院料1の施設基準の厳格化(平均在院日数の基準を「16日以内」に短縮、重症度、医療・看護必要度の該当患者要件の見直し)、看護配置が低く設定された高齢者の救急患者に対応する「地域包括医療病棟」の新設、地域包括ケア病棟入院料を入院期間41日超で減額するなど、「7対1」病床の削減と早期退院を強化する狙いが見える。

 制度改革事項として、「医療DXの推進による医療情報の有効活用等」、「長期収載品の保険給付の在り方の見直し」も示されている。前者はトラブルが常態化し利用が伸び悩むマイナ保険証について、初・再診料への加算新設で急速な普及を促進する構えだ。後者は後発医薬品のある先発医薬品(長期収載医薬品)を使用した場合に、現在の窓口負担とは別に選定療養の仕組みを使って後発医薬品との差額分を患者から徴収する。実質、「医薬品の保険外し」につながるものであり、国民皆保険を根底から揺るがしかねない。

 今次改定の内容は、コロナ禍や物価高騰の中で奮闘する全ての医療機関に冷や水を浴びせるだけでなく、重大医療事故発生の危険性が大きいマイナ保険証普及の責任を医療現場に押し付け、中小病院や診療所をさらに窮地に追い込むもので絶対に容認できない。6月実施を待たず、「診療報酬の大幅引き上げ」を実現させなくてはならない。