オンライン資格確認のシステム導入義務化と健康保険証の廃止は撤回を マイナンバーカード普及ありきではなく、課題解決に向けた国会審議を求めます
10月13日、河野デジタル担当大臣は、マイナンバーカードと健康保険証の一体化により、2024年秋に健康保険証廃止を目指すことを発表しました。また、運転免許証との一本化、アンドロイドスマートフォンでの電子証明書など、岸田首相の指示のもと、総合経済対策に盛り込む方向でマイナンバーカード普及促進を図ることを説明しました。マイナンバーカードの取得を任意とする取扱いは変更せず、所持者と不所持者の差別化政策に巨額の予算を配分し、事実上の義務化を図ろうとするものといえます。
健康保険証の廃止に先がけて、政府は医療機関の任意としてきたマイナンバーカードの保険証利用などの「オンライン資格確認」システム導入を、医療機関・薬局に原則義務付ける(2023年4月より)ことを決定しました。紙レセプト請求以外の医療機関等への義務付けとされており、対象は医療機関の9割超となります。そのうちの、医科診療所22.5%、歯科診療所63.8%(7月現在)は、義務化によって新たな環境整備が必要となります。政府は期限を設け、導入費用を補助するなどで誘導を試みていますが、ランニングコストやセキュリティ対策などへの負担もあり、やむなく閉院や廃業を考える医療機関も出てきています。
この間医療現場では感染症対応やセキュリティ対策、物価高騰など様々な問題に対応してきており、感染不安による患者減も医業継続に大きなダメージを与えています。このような時に、医療機関に普及の責任を押し付け、負担増を強いるオンライン資格確認義務化を強行することは許容できるものではありません。また後期高齢者の窓口負担増を実施しながら、一方でカード普及には莫大な予算をかける、限られた財源の振り分けとしてこのような使い方が妥当といえるのでしょうか。
マイナンバーカードは、個人情報漏洩への危惧など様々な問題が解決されず、未だ普及が国民の半数にとどまる状況にあります。将来的には資産・金融情報と紐づけることも想定されており、保険証として利用するうえで、検討すべき課題は少なくありません。そうであるにも関わらず、国会審議も不十分で、国民への丁寧な説明もないまま、閣議だけで決定し進めることは、民主主義から逸脱するものと言わざるを得ません。
地域医療を維持し、住民の健康を支える私たちは、医療機関の負担増となるオンライン資格確認義務化に反対するとともに、マイナンバーカード普及ありきの健康保険証廃止計画の見直しを求めます。