患者・住民とともに、国民皆保険制度を守る取り組みに全力を尽くす
1961年の国民皆保険体制が発足してから50余年、今、最大の危機に晒されている。政府は国の医療費を抑え、社会保障の市場化を図る「社会保障と税の一体改革」を推し進めてきた。憲法第25条(生存権)の具現化という社会保障の理念を放棄し、自己責任に変質させようとしている。この路線の下で、社会保障プログラム法、医療・介護総合法の成立が強行され、既に病床削減計画や介護保険要支援者の訪問・通所介護の給付外しなどが実施されている。
5月27日には、さらなる大改悪となる医療保険制度改革関連法案が、自民・公明両党、維新の党、次世代の党などの賛成多数により可決・成立した。入院時の食事代の自己負担引き上げ、実質的な混合診療の解禁となる「患者申出療養」の創設など、負担の増加によって国民生活に影響を与え、国民皆保険制度の根幹を揺るがす内容となっている。徹底審議を求める声が相次いでいたにも関わらず、わずかな審議で採決を強行したことは、国民の代表である国会軽視も甚だしい。
負担増計画はこれにとどまるものではない。既に財務省からは、社会保障費の自然増分すら削減し、受診時定額負担・保険免責制の導入や診療報酬・介護報酬マイナス改定などで、医療費抑制策を強化していく案が示されている。
「消費税増税は社会保障のため」と8%への引き上げを強行しておきながら、その税収の大半は大企業への減税や軍事費に回されている。医療機関には消費税「損税」が重くのしかかっており、このうえ実質10年連続となる診療報酬・介護報酬のマイナス改定(薬価の枠外引き下げを加味)では、地域医療を支え続けることはより一層困難となる。10%へのさらなる増税は、社会保障の充実に使われるものではなく、「社会保障と税の一体改革」の下で国民の自己負担が増えていくことにしかならないのである。
厳しい情勢下、広島県保険医協会は、患者・住民とともに、安心して必要な医療が受けられる国民皆保険制度を守り、次の事項の実現に向け、全力で奮闘していく。
一、国の医療費削減計画を見直し、社会保障の理念に基づき、国の責任による社会保障の拡充への転換をはかること
一、医療保険制度改革関連法の施行を凍結し、廃止すること
一、医療再生につながる診療報酬の引き上げと患者負担の軽減を行うこと
一、介護給付対象外とされた項目をもとに戻し、介護報酬の引き上げを行うこと
一、10%への消費税増税は中止すること一、社会保障の財源は、消費税増税ではなく、応能負担の原則にたった税制改革と国民の所得を増やす経済政策によって確保すること
一、医療機関の消費税「損税」は、診療報酬への補填によるのではなく、抜本的な対策を講じること
一、国民生活や皆保険制度を守るため、TPP交渉から即時撤退すること一、原発の再稼働をやめ、原発に頼らないエネルギー政策に転換すること
以上
2015年6月21日
広島県保険医協会第39回定期総会