患者負担が『天井知らず』に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう『医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入』提案の撤回を求める
4月25日の財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省は、「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入(以下、「仕組み」)」を提案した。同様の提案は、すでに自民党の「財政再建に関する特命委員会財政構造のあり方検討小委員会中間報告書~次世代との約束~」(3月29日)でなされている。
この「仕組み」を、平たくいうと、医療費が伸びた場合、保険料の引き上げ抑制を口実に、公費の拡充は不問にし、もっぱら患者負担増のみで対応するというものである。この「仕組み」について、厚労省は、(1)患者負担の引き上げにあたって、患者の受診行動や家計といった医療や生活の実態が考慮されず、患者負担が過大になるおそれがある、(2)インフルエンザの流行や新薬の導入などの一時的要因で変動する医療費や、景気の変動等に応じ、頻繁に患者負担が変わり、将来の医療に対する国民の安心を損ねるおそれ、を指摘している(4月19日の社会保障審議会医療保険部会)。
憲法第25条第2項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。この規定からいっても公費の拡充を不問にした「仕組み」の導入は認められない。
この「仕組み」が導入されれば、2002年健保法改正法附則に規定された「将来にわたって7割の給付を維持すること」さえ踏みにじられ、天井知らずに患者負担が引き上がる恐れがある。保険料負担にあわせて、高率・高額の患者負担となれば、医療保険制度の存在意義が揺らぎ、国民皆保険制度そして日本の社会保障制度は壊れてしまう。
このような提案は、ただちに撤回すると共に、「骨太方針2018」に「検討事項」として盛り込むようなことも絶対にあってはならない。
あわせて、経済財政諮問会議「経済・財政再生計画」の「改革工程表」で2018年度末まで検討事項とされ、財務省等が提案している「75歳以上の窓口負担の原則2割化」「受診時定額負担」「薬剤の自己負担引き上げ」「金融資産等の保有状況を考慮に入れて負担を求める仕組み」の導入についても、受診抑制を引き起こすものであるため、強く反対する。
超高齢化社会に必要なのは、むしろ患者負担を軽減し、世代・所得に関わらず、お金の心配なく医療機関に受診できることで、重篤化を防ぎ、健康寿命の延伸を進めることである。それが、国民間の連帯と政府への信頼を築くことになる。
私たちは、患者負担が「天井知らず」に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」の提案の撤回を求める。
2018年5月16日
広島県保険医協会