東京一極集中が医療にもたらすもの
2045年の日本の人口は、2015年と比べ、秋田県で41%減少、青森県で37%減少との予想が発表されている(日本の将来推計人口・平成29年推計より)。東京都は全国で唯一、0.7%の増加となり、港区、千代田区、中央区に至っては、いずれも30%を超える増加が推計されている。ちなみに広島県は2015年の人口が284万人、2045年は243万人で15%減、広島市、福山市、東広島市は一桁の減少とされているが、江田島市、大崎上島町、安芸太田町に至っては50%を超える減少と推計されている。
首都、政治の中心である東京には、国の行政機関が集中している。上場企業の実に50%が東京都に本社を置き、法人税は東京に集中する。大学も首都圏に集中する傾向は強く、私立大学の上位校の多くが東京や関西周辺にある。全国から上京した若者は、大学卒業後も東京で就職し住み続け、地方には戻らない。
人口集中は、経済発展での利点や、医療分野でも技術革新という点でみると、一概に批判することはできないかもしれない。しかし、大幅に減少が見込まれる地方の将来に目を向ける必要があるのではないだろうか。
人口の減少は税収減を意味し、交通機関はもちろんのこと、電気や上下水道、学校、警察や消防という機関などインフラの縮小は否めない。子育てに欠かせないインフラが縮小すれば、労働力の低下を招き悪循環に陥る。過疎や高齢化が進んだ地域では、医療や介護を必要としても、それを機能させる労働力が不足し維持できなくなる。広島県内でも、山間部や島しょ部には既にその兆候が出てきている。呉市豊町には50年前には3件の歯科医院があったが、ついに最後の歯科医院が3月で閉院し無歯科医地区となってしまった。
政府は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017」(2017年12月)を示し、2020年を目処に東京圏と地方の転出入の均衡を図るとしている。今国会提出の、東京23区の大学の定員増を原則10年間認めないとする法案もその一環である。「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017」の医療に関わる具体的な政策をみると、「団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて、地域の特性に応じた地域包括ケアシステム(医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制)の構築を推進することで、高齢者が自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる地域づくりを進める」とある。また、「健康管理と病気・介護予防、自立支援に軸足を置いた、『新しい健康・医療・介護システム』を構築することにより、個々人に最適な保健医療サービスの提供を推進していく」とされている。保険者はレセプト・特定健診等のデータを活用した健康保持増進事業を行い、そういった保険者へのインセンティブを強化するという。予防を推進していくことは重要なことではあるが、必要な医療を抑制するようなインセンティブになるようでは困る。急激に人口減の予想される地域は、医療インフラの継続策を本気で編み出さなければ、無医地区、無歯科医地区はさらに拡大し、人口減に歯止めがかからなくなる危険性は高い。
人口が増加する東京都でも高齢化は避けられず、2045年には人口の30%に達するという。介護問題が深刻になろう。東京一極集中の是正は地方創生と連動する。システム論を語るのではなく、国の医療費抑制策によって疲弊している医療機関や介護施設を再生させる具体策を示してほしい。