診療報酬オンライン請求 「 義務化 」 方針の撤回を求める
厚生労働省は3月22日、社会保障審議会(医療保険部会)に、光ディスクなどで請求する医療機関についてオンライン請求へ移行することを義務付けるロードマップ案を示しました。紙レセプト請求者についても、2024年4月以降は新規適用を終了し、既存の適用者も改めて届け出ることを求めています。2023年度内に請求省令を改定し、2024年9月末までに、既存の適用者を含め、オンライン請求に移行することを迫るものとなっています。
2021年の「審査支払機能の在り方に関する検討会報告書」では、オンライン請求の促進を掲げていたものの、「医療機関・保険者等において、混乱なく取り組むことが可能となる環境整備が必要」とされていました。しかし、マイナポータルやオンライン資格確認システムが稼働するなかで生じる不具合を検証することなく、オンライン化を強行的に拡大する計画は、オンライン資格確認義務化に便乗する策と言わざるを得ません。
オンライン請求が拡大してきているとはいえ、未だ3割の医療機関では、光ディスク等での請求方法をとっており、とりわけ歯科では7割近くの医療機関がオンライン請求を導入していません。オンライン請求への移行には費用負担やセキュリティ対策の不安が大きく、低診療報酬に抑えられた現状では、廃業を選択せざるを得ない医療機関を生み出すことになりかねません。
政府は医療DXを錦の御旗の如く掲げ、オンライン資格確認整備の義務化を強引に進めるだけでなく、期限を区切り義務化を決めるという同様の手法で、オンライン請求の義務化をも押し付けようとしています。オンライン資格確認で、やむなく閉院を選択する医療機関が続くなかで、さらなる負担と混乱を持ち込むことは許されるものではありません。医療DXを進めるために、診療行為の評価である診療報酬を操作し義務化を強いる進め方は、医療制度自体を歪めるものとも言えます。また、医療機関に過度な負担を押し付け、廃業が加速することになれば、地域医療を損ない、「医療の質の向上」に逆行するのではないでしょうか。
新型コロナの感染拡大が医療機関に厖大な負担とストレスを課すなか、地域医療の維持・継続のため、医療現場への支援策を検討することが政府本来の役目ではないでしょうか。地域医療を担う医師・歯科医師の団体である広島県保険医協会は、医療現場にさらなる負担を強いるオンライン請求の実質「義務化」提案を撤回するよう求めます。