「学問の自由」を侵害する日本学術会議新会員の任命拒否に抗議し、任命拒否の撤回を求めます

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 日本学術会議が新会員として推薦した候補者のうち6名が、内閣総理大臣によって任命されなかったことが明らかになりました。

 日本学術会議は、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」(日本学術会議法前文)として設立された、わが国の科学者を代表する機関です。過去の戦争協力への反省に立ち、内閣総理大臣の所管でありながらも、日本政府がその独立性、自律性を認める組織として位置付けられてきました。

日本学術会議人事への介入は、安倍政権下でも繰り返し行われ、2018年には、「首相は、会員の任命権者として、学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる」とした内部文書をまとめていたこともわかっています。政府答弁と矛盾する任命拒否を正当化するために、国民の知らないうちに法律の解釈変更が行われていた事実は、民主主義や法治国家の根幹を揺るがしかねない重大な問題です。内閣人事局の設置や検事長人事に関わる検察庁法の改定問題等、人事権を掌握することで政権の意向を強く反映させる手法、国民・国会への説明責任を果たさず主権者を蔑ろにする政権運営など、安倍政権での「権力の私物化」を繰り返すことは看過できるものではありません。

私たち医師・歯科医師は、科学的知見に基づき日々の診療に向き合っています。医療活動は、科学の発展と学術の進歩を国民に還元する行為そのものであって、自由な研究と表現・言論活動が政治的な力で捻じ曲げられ、科学の発達向上が阻害されることは、国民の利益を損なうことにもなりかねません。

この度の日本学術会議の会員任命拒否は、「独立」が謳われる日本学術会議法の趣旨に反する科学・学術活動への不当な介入・圧力であり、憲法に定める「学問の自由」を侵害する行為です。広島県保険医協会は、医師・歯科医師の団体として、このことに強く抗議するとともに、速やかに6名の任命を行うよう強く求めます。