与党は法案採決を強行してはならない~重要法案は国民参加で議論を尽くそう

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 2023年1月23日に召集された第211回通常国会は、6月21日までの会期を予定し、法案審議が行われている。統一地方選やサミットを挟んだこの国会には、マイナンバー法改定案をはじめ、複数の重要法案が提出されている。

軍拡財源確保法案

 安保3文書の「敵基地攻撃能力」の保有や軍事費43兆円への増額の実行法案といえる軍拡財源確保法案。「防衛力強化資金」を創設し、国立病院機構、地域医療機能推進機構の積立金を返納させ、国有財産の売却益や東日本大震災の復興財源である復興特別所得税の半分を軍事費に流用するものである。復興税の転用について、被災地住民の声を聞くよう公聴会開催を求める野党に、与党は法案採決後に公聴会を開くことを提案。立憲・共産両党は塚田財金委員長の解任決議案を、立憲は財務大臣の不信任決議案を提出した。

 増税への抵抗が強いことから、予備費を膨らませ、「決算剰余金」から「防衛力強化資金」に流し込む手法は、国会のチェックが効かなくなる懸念が強い。社会保障拡充には財源不足と言いながら、軍事費増には禁じ手の国債発行まで用いる。軍事大国化路線は、将来的な増税と社会保障削減と表裏一体と考えるが、国民の合意はあるのか。

原発推進等5法案

 政府が電力会社の申請を認めたことで、6月からの電力料金値上げが決まった。

 衆議院経産委員会で大島堅一参考人(龍谷大教授)は、事故が起きた際の事業者や国の責任への記述がなく、無造作に運転延長を認める法案は安全神話の再来だと厳しく批判した。原子力エネルギーの増加はCO削減に効果なく、原子力エネルギーを増やせば再生可能エネルギーが減るという相反の関係にある。資源エネルギー庁の資料には、国内プロジェクトの中断、輸出案件の失敗、サプライチェーンは存続危機にあり大手企業は原子力事業から撤退、中核サプライヤの廃業も続いていることが列記されており、原子力産業は衰退産業だと指摘した。確定しているものを含めた原発事故処理の支出は33兆円、1人あたり27万円となり、電気料金の底上げ要因となる。

 本法案は、原子力利用を永続化し、国民負担はさらに増加、事業者を優遇することでモラルハザードの危険性も内包する。深刻な原発事故は収束していないなか、無責任な法案提出と言わざるを得ない。

マイナンバー法改定案

 オンライン資格確認システム導入「義務化」や健康保険証廃止には、保団連からも参議院特別委員会に参考人として立つなど、撤回に向けた取り組みを続けている。

 良質の医療に資すると、被保険者資格確認、レセプト請求、電子カルテと、オンライン化による医療情報の連携が企図されているが、民間による情報の利活用を含む医療DXが、民間保険の市場拡大の入口にすることを警戒している。かつて保険業法改定の背景には、在日米国商工会議所の市場開放要求があった。国民皆保険制度を後退させるものであってはならない。

LGBT理解増進法案・入管法改定案

 G7広島サミット前日、LGBT法案が与党から提出された。15か国の在日外国公館からLGBTQI+の権利擁護を求める声明が発表され慌てて対応したようだが、超党派での合意を修正したため、「人権保障」の概念に欠ける姿を露わにすることとなった。入管法改定案は既出の法案(廃案)を維持する内容となっており、各界からも人権軽視の批判が続いている。

 いずれの法案も、近未来の日本のあり方を左右する重要なものである。結果の報道に終わるのではなく、審議過程での各党の意見を取りあげてもらいたい。数に任せて採決を強行するようなことはあってはならない。