健康保険証を継続して使用できるようにしてください 医療保険制度を歪める10割負担対策スキームは見直しを

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 7月10日、厚生労働省から「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」という保険局長通知が発出されました。マイナ保険証で保険資格が確認できない場合の対応を示したものですが、患者がスマートフォンなどでマイナポータル画面を掲示する、あるいは「被保険者資格申立書」を記入するとされています。これらの手立てを講じたとしても、被保険者資格を確認できないケースが残ることとなり、通知の内容は、療養担当規則第3条「受給資格の確認」に反するものと解されるのではないでしょうか。

 医療現場で通知のような複雑な運用を行うことが困難であるとともに、高齢や障がいのある患者が「申立書」を書く負担、「申立書」を書かせることによって医療機関との信頼関係を壊しかねない点は看過できるものではありません。また、これらの方法を用いたとしても、被保険者資格の確認(医療機関への保険者分の支払い)にどれだけの時間を要するか、実際の窓口負担割合と差異が生じた場合のフォローなど、医療現場の実態を無視した対応策としか思えないものです。さらに、患者が保険料の滞納などで全額自己負担の対象者であった場合、3割等の窓口負担で保険診療が受けられる可能性も孕むスキームとなっています。保険局長通知によって、このようなスキームを持ち込むことは問題ではないでしょうか。

 広島県保険医協会のオンライン資格確認トラブル事例アンケートでは、機器トラブルや情報の紐づけによるトラブルが生じた場合であっても、健康保険証を持ち合わせたことで混乱を回避できた事例が多くありました。マイナ保険証によるオンライン資格確認システムによる負担増は、患者の治療に専念することを妨げ、地域住民の健康を守ることに支障を来す事態となっています。さらなる負担を持ち込む10割対策スキームの凍結・見直しを求めます。つじつま合わせのような対策を重ねることで、矛盾を拡大させるのではなく、健康保険証を継続して使用できるよう政府方針を見直すことを強く求めます。