先発医薬品と後発医薬品の差額を患者自己負担とする案に抗議し、撤回を求める

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 厚労省は11月9日の社会保障審議会医療保険部会で、後発医薬品がある先発医薬品(以下、長期収載品)の保険給付外しを年末までに検討する方針を示した。患者負担を求める理由として、「骨太の方針2023」で示された「医療保険財政の中で、こうした(創薬)イノベーションを推進するため、長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」に沿った創薬力強化を挙げている。

 後発医薬品は先発医薬品と主成分やその含有量が同じとされているが、添加物や製造工程等が異なっている。医療現場からは、明らかに効果が違う、薬剤が均等に徐放されない等、後発医薬品への変更が難しい事例や基剤の違いでかぶれた、他剤へ切り替えたことで血糖値のコントロールが不良となった等の具体的事例が報告されている。

 医師は患者の診察を行い、疾患状態や治療上の効能・効果の違い等を考慮し、先発医薬品、長期収載品、後発医薬品のうち患者に必要な医薬品を判断したうえで処方している。一律に線引きを行い後発医薬品に誘導することは、医師の裁量を侵害するものとも言える。

 日本製薬団体連合会の調査では、2023年10月末時点で、医薬品全体の23.7%、後発医薬品では33.0%が出荷停止や限定出荷となっている状況が明らかとなった。現在も解消の目途はたっておらず、供給が不安定な状況にある。後発医薬品が不足し、長期収載品を使用せざるを得ない状況にある中、後発医薬品への誘導策を導入することは理解に苦しむ。

 創薬力強化を理由に患者負担の導入を検討する方針だが、新薬の恩恵は国民・社会全体に及ぶものであり、患者にだけ負担を求める道理はない。仮に財源が必要であるならば、公費(税金)で検討するのが筋ではないか。厚労省が作成したモデルケース(先発医薬品が200円、後発医薬品が100円)では、窓口負担が3割の場合、長期収載品を使用すると負担が60円から130円と倍以上に増えることになる。長期収載品を使用した場合、患者の自己負担がなし崩し的に拡大されていくことも危惧している。

 長期収載品使用への患者負担導入は行わず、撤回するよう強く求める。