来年の参議院選挙を控えて、安倍政治の総括

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自民党の総裁任期が2期6年から3期9年に改正され、初めての総裁選挙が9月20日行われた。予想通り安倍総理の圧倒的勝利という結果に終わった。この結果は安倍総理の一連の疑惑を自民党が不問にしたということである。肝に銘じておきたい。

来年は参議院議員改選の年である。安倍長期政権をこのまま続行させるかどうか、審判を下す重要な選挙となる。安倍内閣は06~07年の第1次と、その後民主党内閣を挟んで目まぐるしく交代した後、12年から2次・3次を組閣し、現在まで2期6年、1次・2次・3次合わせて首相在籍7年となる。このまま行けば故佐藤栄作首相の戦後最長在籍記録2798日を追い抜く。もし参議院選挙で安倍総裁の下で自民党が勝利すれば、戦前の桂太郎内閣の2886日を追い抜き、最長記録を更新する。しかし、善政を支持されての長期政権であれば言うことはないが、むしろ色々と問題がある。国民として、今、なすべきは安倍政治を検証してみる事である。

先ず、良かった点を挙げてみる。あまり思い浮かばないが、緊縮財政の殻を破り経済の好転を図ったこと位である。しかし、このアベノミクスによる経済効果もデフレ脱却に失敗し、大多数の国民の生活には効果をもたらさず、むしろ経済格差の拡大を招いた。その逆に悪い点は、いくらでも思い浮かべることが出来る。先ず安倍総理の人間的資質の問題で平然と嘘がつけることである。この資質が安倍政治の全てにおいて根幹をなしている。先ず、オリンピック誘致の際、世界に向けて福島原発事故の放射能汚染について、完全にコントロール出来ていると宣言。学歴では南カリフォルニア大学に2年間の留学を詐称(民主党に追及され記録から削除)。国会で行政府の長であるにも関わらず、立法府の長とうそぶいたこと等、数えきれないほどある。この資質が悪影響を及ぼし、「森友・加計」問題に象徴されるような、官僚が嘘と改竄を平然と行う風潮を生み出した。この嘘と改竄を生み出す忖度の土壌を形成したのが、国家公務員法の改悪で、内閣人事局によって官僚をコントロール下に置いたことである。この他、強行採決された悪法は、1.特定秘密保護法、2.集団的自衛権の解釈改憲、3.共謀罪法、4.種子法の廃止、5.カジノ法など枚挙にいとまがない。

なぜ、これほどまでに安倍政権の独裁ともいえる状況を生み出したのか、その原因として一番考えられるのが、24年前に改定された小選挙区制度である。これが一党独裁政治を生み出し、誰も逆らえないような体制を作った。それに加え、メディアのコントロールである。その端的に表れたのが高市総務相の、電波を停止する脅しを民放にちらつかせ、世界を呆れ返させた事である。この安倍政権になってからメディアの自由度は年々下がり、国境なき記者団の評価では2011年民主党鳩山政権時代は、世界180か国中11番目に上がっていたが、安倍政権以来下がり続け、2017年には72番にまで下がっている。このまま行けばますます報道規制が強化され、戦前の「言わぬが花」の世界に逆戻りしてしまいかねない。

このような安倍政治の予兆は、第1次安倍内閣の就任演説の中で述べた「美しい国日本」「戦後レジームの脱却」という言葉から読み取れていた。「美しい国日本」と言えば、その心は籠池氏の学校法人森友学園の教育理念に示されていたものであり、また「戦後レジームの脱却」と言えば、戦後を否定して戦前回帰の思想である。まさに着々と実現の過程にあり、その最終的仕上げが改憲である。このまま日本を安倍政権に委ねてよいものだろうか。