核兵器禁止条約賛成への方針転換を「被爆者援護の拡大を求める」

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核兵器禁止条約賛成への方針転換を

米朝首脳会談が実現し、両国の友好と、朝鮮半島の平和と完全非核化を盛り込んだ共同文書を発表した。世界の人々にとって歓迎すべきことであり、民族の平和的統一を願う朝鮮半島の住民の願いが実現する事が期待される。

核兵器廃絶国際キャンペーンICANによると、9ヶ国が1万4200発の核弾頭を保有し、米国の傘にはNATO、日本、韓国、豪州など26ヶ国、ロシアの核の傘にはベラルーシが入っている。しかし国連加盟195ヶ国の80%にあたる154ヶ国・地域は軍事戦略上、核兵器を拒否している。

昨年7月に国連で核兵器禁止条約が122ヶ国の賛成で採択されたが、日本政府は唯一の被爆国でありながら核保有国とともに採決に参加せず、世界の人々を失望させた。米国などが脅しをかけているため、批准国はまだ11ヶ国だが、40ヶ国が批准の方向にあり、来年末には50ヶ国に達して発効の見通しとなっている。

昨年12月に条約制定に貢献したICANにノーベル平和賞が授与され、カナダ在住のヒバクシャであるサーロー節子さんが「今、私たちの光は核兵器禁止条約であり、核兵器の終わりの始まりにしよう」と魂のこもったスピーチをされた。

今年1月にはICAN事務局長のベアトリス・フィンさんが来日され「被爆者の行動がなければ条約は成立しなかった。広島と東京の政府の間には価値観のギャップがあるが、日本政府は条約に加盟してリーダーになるべきであり、市民の力を結集して強く要求していただきたい」と提起された。

モンゴルは対立していたソ連と中国の狭間にあって、両国に核兵器使用の禁止を約束させて非核地帯となった。つぎは北朝鮮、韓国、日本、米国、ロシア、中国の合意によって朝鮮半島・日本を非核地帯にするべきである。

日本の植民地支配の結果、民族の分断と朝鮮戦争による多数の犠牲を出させた歴史を忘れてはならない。日本は米国の核の傘の下で米国の忠臣となっている現状を改め、核兵器禁止条約賛成に舵を切り、北東アジア非核地帯と朝鮮半島の平和的統一の実現にイニシアチブを発揮すべきである。

被爆者援護の拡大を求める

厚労省が2015年度に実施した被爆者実態調査によると91・5%が治療を受けており、日常生活に障害のあるものは29%で国民生活基礎調査に比して11%多く、年収300万円以下の割合は59%で15%多く、所得の低いものほど被爆者手当の受給率が高かった。

癌などを発症した被爆者が原爆症に認定されると、月額14万円の医療特別手当が支給される。しかし国は厳しく審査するため、認定被爆者は約2000人の時代が長く続いていた。2003年に原爆症集団訴訟が起こされ、国の敗訴が続いたため2008年に認定制度が緩和され、現在は被爆者の約5%にあたる約8000人に増えている。

一方、3年ごとに行われる更新審査が厳しくなり、癌の術後5年たって再発していない場合は、治癒したとして月額約5万円の特別手当に格下げとなる。また、非癌疾患は高いハードルのままである。

認定制度の抜本的な改善を求めて2009年に121人の被爆者によって「ノーモアヒバクシャ訴訟」が始まった。国は敗訴が続く中で、2013年に甲状腺機能低下症、心筋梗塞、肝臓病の原爆症認定の条件を2km以内の直爆もしくは翌日までに1km以内への入市に緩和した。これらの疾患の原告が認定されたため地裁での勝率は77%となり、今は高裁、最高裁に闘いの場が移っている。

日本被団協は、すべての被爆者に健康管理手当相当額の被爆者手当を支給し、障害のある場合は程度に応じて3段階の加算をするという現在の予算内で実現可能な提案をしている。高齢の被爆者に訴訟を続けさせるのは酷である。国は被爆者が納得できる制度改善を行うべきである。