衆院選の結果を受けて~国会に注目しよう、医療現場の実態を知らせ要求していこう~

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10月31日に行われた衆議院選挙の小選挙区投票率が55.93%と発表された。森友・加計学園、桜をみる会にみられた政治の私物化、公文書改ざん、そしてコロナ対策など、争点になるべき数多の問題にもかかわらず、戦後3番目に低い投票率であった。実質的に野党協力ができた選挙区では、与党幹事長や大臣らが落選する現象も起こしたが議席増には至らず、自民党は48.08%の得票率で189議席(議席占有率65.4%)を得た。

民主主義・選挙支援国際研究所(The International Institute for Democracy and Electoral Assistance)の調査によると、日本の投票率は世界139位(2020年)だという。ネットでは若い世代を意識したはたらきかけが行われ、俳優やミュージシャンによる動画配信も注目された。18歳では伸びたものの(47.87%→51.14%・総務省速報値)、19歳の投票率(33.25%→35.04%・同)は微増にとどまる。住民票を異動しない大学生には、時間も費用もかかる不在者投票が壁になっているのではないか。

新政権発足から10日で解散、戦後最短での総選挙となった今回の衆院選では、海外在住者の投票が間に合わない、期日前投票がはじまっても「投票所入場券」が届かないなどの問題が発生し、「投票所入場券」がなくても投票できると普段以上に呼びかける事態となった。駅や大型商店で投票できるようになった一方で、約37%の投票所が締め切り時刻の繰り上げを行っている。公職選挙法は、「投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り、4時間以内の範囲内において繰り上げることができる」としているが、経費や人員確保に困難を抱える自治体が増え、2000年以降約7千か所の投票所が減らされている。中山間地域の高齢者などは、投票に行きたくても行けないのが実情ではないか。

「安心安全」を繰り返し、穴だらけのバブルのなかで開催された五輪。医療がひっ迫し、補正予算案の編成に国会を召集するよう求める野党の要求に応じず、国会登院を避け続けた前首相は、「新型コロナ対策に専任したい」と辞任した。その後の報道は総裁選で埋め尽くされ、総選挙に向け露出度を十二分に高めた。自宅で命を失う事態を招いたコロナ対策、生活の糧を失い、学生を含む若者がフードバンクに並ぶ現状、女性や子どもの自殺の増加(医療・保健従事者の自殺も増加している)。この国の報道は、このような事態を招いた政治を振り返り、国民の選択に役立つ情報を伝えていたのか疑問が残る。

日本学術会議は、先進諸国で共通している投票率低下という現象を、「国民主権」を基本原則とする民主主義国の「政治の民主主義的正統性を揺るがしかねない問題」とし、「各種選挙における投票率低下への対応策」(2014年)として、①政治活動・選挙運動の自由化促進と、政治における透明性の増大、②投票所の設営に関する規制の緩和などの技術的方策、③国民各層に対する主権者教育の充実、を提言している。投票環境の整備は、主権者である国民の権利をどう守るかであり、為政者がいの一番に取り組むべきものともいえる。

新型コロナの対策では、医療現場や都道府県、住民の要求の高まりに、不十分とはいえ拡大や改善が図られた面がある。選挙が終わり、関心が低下すれば、「選挙のときだけ」「公約に掲げるだけ」がまかり通る。主権者である私たちは、国会議論に注目し、誠実に職務を遂行しているかを問うとともに、要求活動を続けることが重要だろう。保険医協会も、引き続き医療・介護現場の実態を知らせ、要求実現に向け行動していく。