効率化優先の計画は、住民から医療を遠ざけ、都市と地域の医療格差を拡大する。地域の実情を無視した病院の「再編・統合」データの撤回を

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9月26日、厚生労働省は、全国1455の公立・公的病院のうち、424病院について、「再編・統合」が必要として、その名称の公表を強行しました。がんや救急医療の診療実績、「近接する医療機関」等を分析したとして、広島県内で13病院、中国5県では48病院を「再編・統合」の対象としています。突然の病院名公表の背景には、「地域医療構想」での病床削減計画が難航していることがあるといいます。

超高齢化社会となり増加する医療費を抑えるため、政府は社会保障費の抑制を続けています。しかし実際には、高齢化等による「自然増」分もカットし、その影響は地方の医療に強いダメージを与えています。山間部、島しょ部の多い広島県ですすめられた「再編・統合」の事例は、地域住民から医療を遠ざける事態を生じさせています。今回、名指しされた病院は、交通格差が拡がる地域で、民間では受け入れづらい不採算部門を担うなど、住民にとってなくてはならない役割を果たしています。医師不足が与える診療実績への影響を加味することなく、患者負担増などの受診抑制策をすすめながら、実績評価で地方を切るようなやり方は看過できるものではありません。

医療は、地域に人が住み、生活をしていくためのインフラともいえます。地域の診療所と機能を持った病院が連携して住民の健康を守る。安心して連携できる病院がなくなる、遠くなることは、都市と地域の医療格差をますます拡大させるだけでなく、スタッフの雇用が地域に与える影響も無視できるものではありません。

「経済財政運営と改革の基本方針2019」(6月21日閣議決定)では、民間医療機関においても、2025年の「病床数等の適正化」の実現に向け、議論を強めていくとしており、自治体の権限強化を盛り込むなど、さらなる強行策がとられることを危惧しています。機械的で強引な手法は、該当病院や地域の住民のみならず、地域医療を担うすべての医療機関に不安を生じさせています。どこでも、誰でも、一定の医療を受けることができる権利を保障する、そのための医療提供体制を整備していくことこそが、行政本来の役割です。厚生労働省は今回の公表データを速やかに撤回すること、その地域の医療提供体制にあっては、民間病院・診療所や住民等を含めた幅広い議論によって、その地域の将来像とともに検討していくことを求めます。

 

2019年10月8日

広島県保険医協会